1. TOP
  2. 社会人ノウハウ
  3. 仕事のやり方
  4. 受ける技術

受ける技術

ROverhate / Pixabay

伝統的日本企業は地雷ばかり。。

さて、今回は、ここ何年か僕自身がよくその重要性を感じている「受ける技術」について、お話してみたいと思います。

たくさんの人々の利害が渦巻く組織で、トラブルに巻き込まれることなく働くには、自らの発言や言葉遣いにはとりわけ慎重になる必要があります。

同じことを言っても、ある人には褒められ、ある人には罵倒される、という会社における状況は、まさに戦場で地雷がどこにあるかわからない地帯を恐る恐る忍び足でオロオロと前に進むような状況ととても似ています。

周到な準備をしても何らかの不運が重なると地雷を踏んでしまい、被害を被ることありましょうし、何も準備せずツカツカ前に進んでも、何も起こらず地雷地帯を無傷で通過できることもある、という意味合いにおいてです。しかしながら、そこに地雷が埋まっている可能性がある限り、(やはり死に直結するわけですから)それを回避する方策を知る必要がないことにはなりません。

大抵の人は、「どうせいつかは被弾するんだから俺は丸腰で戦場に赴く」、という判断には至らないことでしょう。どちらかといえば、死ぬ可能性があるのだから、その可能性を極限までゼロにすべくやるべきことは全部やる、ということになるのではないでしょうか。

いやいや、そんな発言や言葉遣い一つでサラリーパーソンとしての死に直結する会社なんて、まともじゃないよ、そんな会社で働いてないよ、という方ももしかしたらいるかもしれません。そういう人にとっては、今回の話題は、あまり役に立たないのかもしれませんが、こういう会社も(未だに)あるよ、といった見聞を広げる程度に聞いてもらえるとそれはそれでいいのかなと思います。

いずれにせよ、今回は、サラリーパーソンとしての死に直結しかねない状況で、冒頭お話しした「受ける技術」どう役に立つのか、お話しします。

「受ける」技術と言いましたが、幾つかの要素が掛け合わさって、初めて「受ける」技術が成立します。何か一つのアクションを意味するものではないということです。

では、まずどういうシチュエーションで必要とされる技術か、その状況から整理していきたいと思います。

受ける技術が必要とされる状況とは?

組織で生きる人間である以上、上司あるいは上席の方々からの無茶なオーダーを振られることが多々あることでしょう。それは、技術的に不可能なものだったり、時間的に処理が難しいものだったり、単に優先順位として低いと言わざるを得ないものだったり、オーダーの種類は様々です。

というか、大抵は、この状況でそんなものできるわけねーじゃねーか、と、本音を言えば、そう吐き捨てたいようなオーダーが時折(頻繁に)振ってくるものであります。

一方で、じゃ、忙しいし、実際に無理っぽいから、素直に「いや、無理ですよ、できません」と断って良いのか、というと、一度くらいならまだしも、何度もそうした対応をしていると、非常に悪い印象を与えますし、デジタルなパフォーマンスというよりは印象点の蓄積で人事がほぼ決まってしまう伝統的な日本企業においては、(不本意な異動や左遷等の)不利な扱いを強いられることにもつながるでしょう。(人によっては、これを死と同じくらい重いものと受けとることでしょう。)

上司も部下が忙しいのは、知っているのです、また、そう簡単にこなせるオーダーではないことも重々承知しています。しかし、「無理です」とはねつけてしまうと上司の立つ瀬がない。

彼らは、彼らの更に上の役員からなのか、社長からなのか、上客のトップから無茶振りされたのか、立場上、一度は部下に対して、無茶苦茶なオーダーとはわかっていても、是非やってほしいと、振らないといけないのですね。

そうした物言いに対して、無下に「いや、できませんよ」とは、上司のメンツをつぶすことにもつながるし、お金をもらってプロとして働いている以上、口が裂けてもいってはいけないことなのだと思います。

不法行為に手を染めろ、と言われているなら話は別ですが、業務に関連するオーダーである以上、どんな無茶ぶりであっても、どんなに忙しくても、一旦は「受ける」必要があります。

受ける技術が必要となるのは、このように、上司から無茶振りをされたけど、どうにもこうにも、その無茶振りをそのままYesと言えないような状況、という設定でこれから進めていきます。

 じゃ一体「受ける」とはどういう意味なのか?

そこで、はじめに、「受ける」とは何を意味するのか、はっきりさせないといけません。

「受ける」とは、「オーダーを発出した人が気持ち良く受け答えできる環境を整えた上で、当該オーダーにより達成される目的の本質を整理し、オーダー発出者が当初気づいていなかった新しい視点でオーダーを捉え直して、そのオーダーを処理すること」、と定義することとします。

単に、オーダーをその文字面どおり「受ける」という意味ではありません。(それができないから、困るんですよね、ホント(^^😉

では、上記の定義を3つの要素に分解し、具体的にどういうアクションが組み合わさって、受ける、が成立するのか、を考えていきたいと思います。

受ける技術を構成する「一つ目の要素:No不快感」

まず、「オーダーを発出した人が気持ち良く受け答えできる環境を整えた上で」とは、「相手が気持ち良く、こちらの提案を受け入れるように、提案以前の諸々をぬかりなく処理して、たった一つの要素でさえマイナスの感情を持たせないように」という意味です。

つまり、提案そのものの善し悪しの前に、ミーティングの場所・時間設定、前後の打ち合わせの内容、関係者の意見の取りまとめ方法、そのプレゼンテーションの方法、はたまた資料で使われるフォントや小数点の区切り方(笑まで、人というのは好みがあるんだから、その好みをきちんと考慮したほうが、そうした環境下で行う提案は受け入れられる確率があがるので、そこはしっかりやりましょうよ、ということです。

世の中の流れとしては、こうした瑣末な・調整的な要素は、効率という観点からは排除されるべきと考えられていますし、僕自身も全て効率性とロジックで物事を進められたら、これほど楽なことはないと思います。

一方で、残念なことに世の中一般でいう権力者は、こうした調整的な事項に大きな価値を置く人が少なくありません。効率性という名の下に、所謂「根回し」の存在が若手中堅を中心に軽視されつつある今だからこそ、こうしたことにきちんと配慮できる周到さが際立つのではないかと思います。

僕も働き始めてから数年は、「なんで、この人はこんなくだらないことに固執するのか、ロジカルに考えれば、こうやるべきに決まってるのに、バカだな」と思っていましたが、バカだったのは僕だったわけです。

逆の立場になって考えれば、自分が心地よいという仕事の進め方ですとか、調整のやり方というのは、必ずあります。それを無視して、ロジックという誰でもわかる無色透明な物だけを考えて物事を処理するだけでは、物事がうまく運ぶわけはありません。

人の心理には、言うまでもなくロジックで片付けられない何かが介在するし、それゆえに、その人らしさ、みたいなものが滲み出てくるものだと思います。(そして、それを本人も大事に思っている)

全て目に見えるデジタルな何かで極めてロジカルに出世するか否かがきまっているのであれば、仕事の能力は凡庸だが可愛げがある、気がきく、一生懸命である、といったデジタルでは計れない部分で秀でている人間が(多くの組織で)出世している現状の説明がつきません。

ロジックで考えられる部分はロジックでギリギリまで詰めて、その先は、人間の好き嫌いみたいなファジーなものに集約されるのであれば、そのファジーな部分をがしっと掴むべく、提案以前の「環境を整える」という作業が決して無駄ではない、ということがわかるでしょう。

というより、慣れれば、別段頭を使う必要もないのですから、これほど時間対効果の高いスキルはない、ということになります。

受ける技術を構成する「二つ目の要素:読心術」

次に、「当該オーダーにより達成される目的の本質を整理し」ですが、「そのオーダーを額面通りに捉えずに、オーダーの真意が一体どこにあるのか考えたほうが良い」ということです。

例えば、「今月中に10億円売り上げを増やせ」という上司からのオーダーがあったとします。遮二無二、10億の売上アップに取り組み、それで達成できれば良いですが、大抵は無理ですよね。

そこで最近、上司がどういうことを気にしていたか振り返ってみると、「隣の営業部門の成績を部長が気にしているから、もし追いつかれるようなら、なんとかしないと」、的な発言が相次いでいた、とします。こういう言動を鑑みると、オーダーの真意は実は以下のようなことなんじゃないかと推測できるわけです。

オーダー「今月中に10億円売上アップさせろ」→真意「今年は絶対に隣の営業部門に負けるわけにはいかないが、足元の売上についてはイマイチよくわからないから、えーい10億って言っておけば、あいつらなら3分の1の3億くらいはなんとか上乗せすることができるだろう!」

この真意を汲み取れば、オーダーにどのように答えるかというのは自ずと見えてきます。

いや、読心術なんかもってないんだから、そんなのわかるわけないじゃないか、と思うのですが、これって実はどの職業でも一定レベルに達している人間は身につけている能力なんじゃないかと最近思います。

僕なんかはまだまだ未熟で、上手いわけでもないんですけど、本当にこのあたりの能力に長けている人はいまして、最終的な到達点としては、言われる前からすでに真意を把握しているため、言われる前に先回りして資料を作っている、だとか、その場で即座に回答できるレベルなんじゃないかと思う次第です。

そのレベルに達していれば、上からしてみれば、こいつに任せておけば安心だ、的にどんどん面白い仕事も回ってくるのだと思います。なんせ、言わなくても自分の意に沿うようによろしく動いてくれて、且つその進め方も自分好みというわけですからね、そりゃ信頼されますよね。

受ける技術を構成する「三つ目の要素:捉え直す力、リフレーミング」

最後に、「オーダー発出者が当初気づいていなかった新しい視点でオーダーを捉え直して、そのオーダーを処理すること」ですが、これは字面のとおりで、真意を把握した上で、一手間加えて回答する、ということですね。

上の例で言えば、「今月中には、3000万の売上アップで隣の部門に勝つことができます、年内(まで3ヶ月あると仮定して)で考えても1億あれば、十分です。なぜなら、隣の部門で最も売上ているあのプロダクトは現在生産工場のキャパシティが逼迫していて、これ以上の受注を受けるのができない状況で、これについては既に工場で生産管理をしていたうちの中堅の田中に裏を取らせましたので間違いありません。

また、万が一のために、部門間の売上を比較する会議の日程を20日間後ろ倒しさせました。これで、期限内に少しの未達があった場合でも、次年度の売上を少し前倒しさせることで、キャッチアップすることは十分に可能です。」といったような、回答です。

もっといえば、オーダー発出者が想定しているような形でオーダーを処理しても、何のサプライズもありませんし、あぁこいつはこの程度か、と思われて、むしろ評価が下がることすらあります(なんとも身勝手な話ですが、こういう理不尽なことは現実の社会においては往々にしておこりうるのですね。。)

ですから、何か提案をするときは、常に相手の予想を少し斜め右にいくような提案をする、というのが良いと思います。たとえ、上司が、おれはお前にこうしてほしい、とはっきり指示されていても、あえて、それを達成した上で更に高みを狙うというくらいが丁度いいです。

それって、例えるならば、すぐれた映画のラストシーンみたいなものだと思います。すぐれた映画は、こちらが予想していた結末の予想を遥かに超えていて、同時にこれ以上ない感動も与えるようなものですよね。予想していたとおりでした、では、2流の映画にとどまりますが、あえて、それ以上を見せることで評価が高まる、という。(もちろん、ストーリー性はそこそこに映像美で訴えるような映画もあるので、一概には言えませんが。)

おそらくですが、人間というのは、自分で考えたとおりに事が運ぶと、安心する一方、些か落胆する、というような相矛盾した性質をもっているものなのではないでしょうか。自分の思い通りになってほしい一方、思い通りになったらなったで、つまらないと感じ、自分が想像を超えたものを常に待っている、ような。

いずれにせよ、期待どおりに働くことでよしとせず、一手間を加えて、少し(これは本当に少しで構いません、やりすぎると、次回以降の期待値が高くなりますので、それはそれで持続可能ではないです)上を狙う、というのは、差別化を図るのにとても良い戦略です。

最後は自分が頭を使って考えることかも

さて、これまで、上司の無茶振りをどう「受ける」かについて、僕なりの考えを述べてきましたが、改めて眺めてみると、「いや、こんな当たり前のこと、できない奴が悪いじゃないか」ですとか、「ここまで考えなくても絶対にうまくいくよ」というように、働いてる業界や会社ごとに意見が真っ二つに割れるのではないかと思います。

新陳代謝の早い企業であれば、物事を進める基準はファクトとロジックのみ、くだらない調整やしがらみは無視!、というようになるのでしょうし、歴史の長い大企業であれば、ファクトとロジックは当然として進め方(調整能力:いかに不快感を与えずに)も同じくらい重要ということになるでしょう。

自分がどういう企業で働いているか、そもそも上司がどの種の人間なのか、きちんと把握した上で今回の方法論を部分的に適用するべきなのか、そもそも無視するべきなのか、判断するのがベストではありますが、今回述べた受ける技術は知っていて決して損はないでしょう。

なぜなら、こうした技術を日常的に必要としない新興企業であっても、マネジメントレベルに上がるにつれて、必要とされるのは、その業界の長やその取り巻きとの調整が求められるようになり、遅かれ早かれ、結局はこうしたスキルが活きる局面が出てくるからです。

ですので、さしあたり必要ではない人も、今のうちに最低限要点は押さえておくと良いでしょう。

それでも、やるべきじゃないオーダーもある

しかし、あれですね、時に、どんなに受ける技術を駆使しても、受けられない、あるいは最初から受けるべきではないオーダーもありますね。

そもそも、その上司がとても嫌な奴で、単純に嫌がらせでそういうことを言っていることもあるのでしょうし、もしかしたら、そういう局面のほうが多いのかもしれないです。

そうした局面への対処法は、また別の機会に自分なりに考えを整理してお話ししてみたいと思います。