飲み会の作法 – 第2回(飲み会前(1st phase))

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前回のおさらい(phase0:前提)
前提をおさらいすると、
- 飲み会というのは、実務能力を試される場になりうるため、これを大きくしくじると、仕事ができないやつという烙印を押されるリスクを負う。
- 自分以外が楽しむ飲み会に分類されるため、自分の嗜好は一切勘案されない。
ということでした。
3phase approach
これからは、飲み会のセッティングを実際に行う際に僕が推奨する、
- 1st phase:飲み会前
- 2nd phase:飲み会中
- 3rd phase:飲み会後
の3phase approachを順に説明します。
1st phase – キーパーソン以外の要望は聞いているフリが吉
1st phaseで留意すべきは、キーパーソンにとにかくフォーカスすることです。
ここで、キーパーソンの特定を見誤ると、もう取り返しがつきません。
スケジュール、場所、料理、等々、1st phaseで考慮すべきこと一つ一つに個人的な嗜好が絡んでくる上に、その嗜好は個々人ごとに真逆だったりするわけです。
これを全て叶えようとするのは不可能で、端的に言うと、誰かの要望は切り捨てることになります。そこで、誰の要望を切り捨てていいかというと、キーパーソン以外の有象無象な人たちです笑。
ただし、礼儀として、その他の有象無象な人たち(言葉は悪いですが、飲み会のセッティングにおいては、それくらいの認識でなければうまくいきません、常にあれがいい、これがいい、あれはだめ、これはだめ、と口を挟んでくる人間がいるものです。)に対しては、きちんと真摯に申し訳なさそうな顔をして弁解をし、言われのない非難や中傷を避けるように振る舞うべきでしょう。
(弁解のネタとしては、上席の都合や好みをしっかりとリサーチした上で使いましょう。これを面倒臭いからといって曖昧な対応に終始すると、「わざわざ俺に都合の悪い、嗜好に反した飲み会を設定したのではないか」、という邪推をする人間が出てきて、とても面倒くさい処理を迫られることになります。少しの面倒を惜しまず、その後の大きな面倒を回避するというのは、とても重要なリスク管理スキルの一つです。)
さて、重要だと述べたキーパーソンをここで定義してみましょう。
ここでいうキーパーソンとは、歓送迎会である場合は飲み会のゲスト的存在の人たち(送られる人、迎えられる人)、あるいは、上席の人(役員、部長、副部長に相当する位の人たちのことを指します、いわゆる課長はよっぽどのことがなければ、キーパーソンには入りません)を指します。
この場合、どちらに優先順位を置いて考えるかというと、上席の人たち>ゲスト的存在の人たち、です。
考え方としては、上席の人たちがわざわざ貴重な時間を割いて飲み会に出席しているのだから、ゲストとはいえ、一定の配慮はするべき、というものです。これ、自分が楽しむ飲み会だと、序列は明らかで、ゲスト的存在の人たち、ありきなんですよね。
しかしながら、これは日本の伝統的会社の飲み会です。大きなフレームとして、自分が楽しむ、というのは全く考慮されないばかりか、実務能力も試されているわけです。
きちんと部門の長にアピールするためにも、この優先順位を間違えてはいけません、胸に刻んでおくのがよいでしょう。
1st phaseでさばくべき要素 – とにかくリサーチ!
では、1st phaseでさばくべき要素を見ていきます。
少し細かいかもしれませんが、どれも重要な要素ですので、面倒くさがらずに汗をかきながら一つずつ着実にこなしていきましょう。
ロケーション:オフィスから徒歩5分以内
あなたがどんなに気に入った店があっても、あなたのオフィスがある駅から絶対に離れてはいけません。
ましてや、当日天候状況もわからない中、飲み会は敢行されるわけですから、オフィスから徒歩5分以上あるくなどとんでもないことです。
5分以上歩く場合は、その他の嗜好をかなり高いレベルで満たす店がそこにしかない状況で初めて許容されるものです。
基本的には最寄駅、オフィスから5分以内を目安に店を選定すべきでしょう。
料理の種類:冒険はせず居酒屋が無難
料理の嗜好は多種多様です、全然気にしない人もいれば、気にする人もいます。
ただし、飲み会、という言葉が指し示すとおり、基本的にはお酒を飲むわけです。
したがって、食べることが中心になる場所を選ぶのは、相当程度リスキーです。
本格的なイタリアン、フレンチ、寿司屋、等々、飲み会がメインに開催されないレストランは避けるべきでしょう。
また、よっぽどのことがない限り、食べ放題である必要もありません。
目的は、食べることではなく、キーパーソンに配意して飲み会を円滑に遂行することです。
最近は、色々な形態の居酒屋がありますが、いわゆる日本の居酒屋にしておいたほうが無難でしょう。
事前に好みを把握して、問題ないと判断した上でスペインバルにトライするのもアリですが、ガイドラインとしては、日本の普通の居酒屋を選ぶ、でよいでしょう。
飲み会のプラン:コース+飲み放題
飲み放題にしましょう。費用的な観点からは、もしかしたら飲み放題じゃないほうが、得なケースもあるかもしれませんが、「うわばみ」が数人いるとあっという間に、損益分岐点を超えてしまうリスクを回避するというのと、あえて種類を制限する(飲み放題プランの場合、対象となるドリンクは限定的となる)ことで、お店側の受注ミス・オペレーションの負担を減らし、「あれがこない」、「間違えて、これが来た」等の無用なストレス発生要因を除去するという観点からも、飲み放題が無難です。
また、料理もコースがよいでしょう。アラカルトで、いちいち選ぶのは面倒くさいですし、到着してからアラカルトで注文すると、実際にテーブルに並ぶのは10-15分経ってからとなります。(注文に手間取るともっと時間がかかる。)
なお、お店側としては、飲み放題プランでガツっと売上の見込みが経つ客に対しては、キッチン・ホールスタッフ共にそれなりの陣容を敷き、前々から準備もしてくれるため、その日の料理や酒の取りはこびが極めてスムースになるケースが多いです。
一方、酒も料理もアラカルト(逐次頼む形式)だと、最終的にどれくらいこれらの客から儲けが出るかようわからんし、結果として飲み放題プランの客を優先し、アラカルトの客の注文やサービスを後回しにすることも少なくありません。
いくら他の条件を満たしていても、料理と酒がくるのが遅ければ興ざめです。
ここは、日本経済活性化のためにも、ケチらず飲み放題プランで予約をしましょう。
費用:込み込みで5,000円を基準に
いくら雰囲気がよいとはいっても、値段が高すぎては意味がありません。
これは3rd phaseで考慮すべきことなのですが、上席は多めに費用を負担します。
つまり、全体の支払額が多くなればなるほど、彼らの負担額は多くなります。
野放図に高い居酒屋やレストランを予約すると、下手すると上席の懐からは数万円というお金が飛んでいくわけです。上席の方々としても、相応のお給料はもらっているものの、所詮は日本企業ですし、下っ端の何十倍ももらっているわけではありませんから、たかが飲み会で数万も払いたくはありません。
一度、皆で調子に乗って高い居酒屋でしこたま高い酒を注文するという小規模の飲み会を僕が幹事で開いたことがありますが、その後の会計で大いにもめたケースがあります。
(後日、会計を上席に持っていくと、もう一度考えてみろ!と怒号を浴びました、当時は考えるも何も、これは事実なんだからどうしようもないのに。。と思いましたが笑)
というわけで、懐の深い鷹揚な上席ばかりならまだしも、そんなことは事前に知る由もないのですから、(懐事情は聞いてはいけないルールです笑)冒険はせず、一人5,000円を基準に考えるのがよいでしょう。
5,000円よりもっと安いプランはありますが、僕が知る限りにおいては、いわゆる会社の飲み会で3,500円のプランにしろ!と言われたことはありません。
ところで、僕自身は一度、新人という身分を卒業してある程度自分の意見が言えるようになってから、3,500円の料理コース・飲み放題プランを実験的に試したことがあります。
意外なことに文句が出ませんでしたが、料理の質・酒の質・店員のサービスともに悪く、次の日に、「なんか、やたらと酔っぱらったな、昨日は」とか、「いまだにすごい酒が残ってるよ、なんでだろ」とか、「恐ろしいくらい安かったな、どうしたんだあれは」とか、言われた記憶があります。
やはり、飲み放題で一人当たり3,500円って、店的にはほとんど儲けがでない、というか、儲けを出そうとすると料理と酒の質を相当程度落とさないといけないんでしょうね。
ゆえに、料理も酒もまずく、微妙、、、ということに。
もちろん、その値段でもしっかり仕事してくれる店もあるとは思うのですが、会社の近くとなると見つけるのは大変かもしれません。
というわけで、3,500円のコースは一般的には避けたほうがいいでしょう。
日取り:キーパーソンにきちんと聞くこと
いつ飲み会をするか、これはキーパーソンに都合のよい日を打診するほか方法はありません。
しかし、「都合のよい日はいつですか?」と聞くと、本当に都合のよい日しか提示されず、挙げ句の果てにキーパーソン同士の予定がかちあったりして、改めて「その日はダメだったので、この日はどうでしょうか」と聞きに行くはめになり、「一回聞きに来たのに、もう一回聞きに来るのかよ、忙しいのにうるせーな」と悪い心象を与えることにもつながります。
したがって、候補となる日を2,3日に絞った上で、「ABCとありますが、ご都合の悪い日はありますでしょうか?」と聞くのが定石です。
こつは、都合のよい日を聞かずに、悪い日を聞くことです。そうすると、本当に悪い日をきちんと伝えてくれます。逆に都合のよい日を聞くと、毎日なにがしか上席の人なら予定が入っているでしょうから、保守的に答えようとして、これまたスケジュール調整が難航する原因となります。
なお、その部門で大きなプロジェクトや会議を予定している場合は、その直前に飲み会を設定する等の愚を犯してはいけません。
これをやると、当該プロジェクトに従事しているメンバーから上席に密告がなされ、最初はその日で異存のなかった上席から諌められることにもなります。
また、部門内でのレピュテーションも悪くなることでしょう。(ちなみに、こうした状況を社会人用語で、「往復ビンタ」といいます。)
お前は自分のことさえうまく進めばどうでもいいのか、といった心理ですね。
なので、最低限、部門内の業務の進捗については大まかには把握しておきましょう。
時間:開始時間は19時を目処に
開始時間は遅すぎても早すぎてもいけません。
職場環境によって始める時間は異なるのですが、1830or1900のどちらかで問題ないと思います。
席次
事前に会場を下見して、どんな席だか確認しておきましょう。
その上で、少なくともキーパーソンの席次は事前に決めておくべきです。
間違えても下座に配置してはいけません。
なお、入り口に一番近い席は、幹事席です(注文しやすいため)。
ちなみに、下見の時には、きちんと掘りごたつ式なのか、座敷なのか、テーブルなのか確認しておきましょう。
上席が年配の方の場合、掘りごたつ式が好まれることが多いです。中には座敷NGの人もいるので、そこは注意しておきましょう。
2次会の会場
もういい加減にしろ、という声が聞こえてきそうですが、まだまだ続きます。
2次会の会場は事前に押さえておいたほうがいいでしょう、人数をある程度把握しなければいけない場合は、事前に参加するメンバーを把握しておいたほうがいいです。
1次会の後に、みなでぞろぞろ会場難民となり彷徨い歩くことになると、1次会の評価も台無し、水泡に帰すことになります。
挨拶の前振り
キーパーソンには、乾杯や中締め、お別れの言葉等、飲み会の要所要所でスピーチしてもらうことが多いです。
これを事前に何も言わずに、いきなりその場で依頼すると後々怒号を浴びるか、浴びない場合は「どうしようもない奴」と思われます。
事前に、「乾杯の音頭と一言をお願いします」、「途中でお別れの言葉をお願いします」、「中締めの言葉と関東一本締めをお願いします」といった挨拶の前振りは当事者に依頼しておきましょう。
誰が最初に挨拶をして誰が締めるのかは、会社によってルールが異なると思いますが、基本的には、最も偉い人が乾杯、その次に偉い人が中締めです。
1発芸の前振り
最近はだいぶ一発芸を強制する会社も少なくなってきたとはいえ、少なくなったからこそ、しっかり披露すると評価が上がるという側面はあるように思います。
しかし、そこで評価を上げても、結局は仕事で評価されるわけで、一発芸の評価が職場に過度に持ち込まれることはないのですから、命をかける必要はありません。
ただ、一方で恥ずかしがって適当なものを披露すると、その場が白け、飲み会そのものの雰囲気を台無しにします。
アップサイドは限定的ながらダウンサイドは無限大という質の悪い金融商品みたいな代物ですが、もし披露することになった場合は、このダウンサイドリスクを限定的にするため、仲間を募ってきちんと練習した上で挑むのがよいでしょう。
練習の甲斐が見える複数人で行う一発芸を馬鹿にする人はいないはずです。(いても、無視してokです。)
以上が、飲み会前、1st phaseのポイントです。