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出世の力学(伝統的日本企業編)

Unsplash / Pixabay

結局どういう人間が出世するのか

今回は、伝統的な日本企業で、結局どういう人間が出世するのか、という点に絞ってお話しします。

もうこれは、毎回のルーティンになりますけど、最初は「出世」の定義を明らかにすることから始めます。

今回お話しする出世とは、いわゆる世間的な出世のことを指します。具体的には、「花形部門を渡り歩き、経営企画等の中枢も経験して、部長または役員になること」、です。

究極的には、社長になること、なのかもしれませんが、そうすると多分に運の要素が絡んできますし、そもそもサンプルも少なく一般化することは難しいので、部長または役員になること程度に枠を広げておきましょう。

サラリーパーソンとして、一体全体、何をどうすれば、部長または役員になれるのか、その一般的な方法論を知っていて損はありません。

できれば自分も出世したい!というような場合はもちろん、出世はしたくないけど、興味のある仕事がしたい、というような場合も、将来偉くなりそうな人間と関係(このように言うと、おべっかを使ってゴマをするような印象を与えるのですが、そのようなどす黒い関係ではなく、単純に爽やかで裏表がなく気持ちがよく仕事ができるポジティブな人間、と偉い人に思ってもらう程度にコミュニケーションをしておく程度のことです)を持っておくと、特にこちらがお願いしなくても、適時のタイミングでちょっとした口利きのようなことをしてくれることもあります。

その他にも、将来自分のラインの部長なり役員になるのは誰か知っておけば、その手前からその人の癖なり好みを知ることにも繋がりますし(これも媚をうるとかそういうことではなく、気にするポイントを覚えておいて、そのポイントを押さえた資料なり説明ができるようにしておく程度のことです。いわゆる、自営業でいう、一人のお客様の嗜好を徹底的に分析・理解して、カスタムメイドのサービスを提供する、ことと何ら変わりません。)、まぁ色々とプラスの側面がありましょう。

いずれにしても、組織で働く以上、誰が偉くなるのか?、の要諦は押さえておくにこしたことはありません。

そこで、どのような人間が出世するか、ですが、出世を構成するファクターを100%とした上で、どの要素が何パーセント位占めるか、という形式で説明します。

  • 仕事の実力(based on 地頭の良さ);30%
  • 人柄;25%
  • 上の人の覚えが良いかどうか;25%
  • 運;20%

おそらく、伝統的な日本企業で働く方は、共感していただけるのではないでしょうか。

では、一つずつ見ていきましょう。

仕事の実力(based on 地頭の良さ);30%

たったの30%なのかよ!と、新入社員の皆さんや学生さんは思うかもしれません。でも、実際こんなもんですよ。仕事の実力というのは、いかに多くの変数を同時に扱えるか、ということに帰結します。

凡人なら、せいぜい5-6個(目の前の仕事3つ、上司の機嫌、週末の予定、週中の予定等)を同時進行すれば、もういっぱいいっぱいですが、仕事ができる人というのは、10-20個くらいは軽く同時でこなしているような気がします。具体的には、とにかく色々なことによく気づく。

マクロの視点とミクロの視点を同時に兼ね備えており、かつ、その見る角度をちょくちょく変えて見られるものだから、一見問題なさそうなものにも、問題を見出し、より良いものを作ることが可能となります。

また、他人の感情という人間の頭のCPUを最も使うファクターも、相当程度核心に迫って捉えられる、というのも一つの実力です。

これも、それも、すべては、より多くの変数を同時に扱えるかどうかにかかっています。つまりは、人一倍感度が鋭く、人並み外れた想像力があり、それらを高いレベルで同時進行できるということですね。

単に、勉強だけを意味することなく、仕事上で発生するすべての変数のより多くをカバーできているかどうか、というところが特徴的かもしれません。

ただ超絶仕事ができたとしても所詮は30%、それによって出世が確定するわけではないです。

この辺りが、大学卒業まで自らが努力して勉強さえできれば、何とかなってきた学生の皆さんの原理、というか論理とは相容れない部分なのかと思います。もちろん、相応の要素を占めるので、地頭の良さに裏打ちされた仕事の実力があることは有利とはなりますが、それ以外の要素も重要だということですね。

人柄;25%

人柄というと、人柄が良い、面倒見がいい、部下に慕われている、等のポジティブな側面を想像するのではないかと思いますが、実は出世する人間の人柄は2種類に大別できます。

まず一つ目は、やたらと出世のことを気にして部下のことは何も考えず、上にたいしては媚をうる一方、下に対してはやけに厳しく横柄な人柄です。いうまでもなく、部下には全くもって慕われませんが、上からのどんなオーダーでも受け、気に入られるため、「何でこんな奴が」との思いは、上に伝わることはなく、どんどん出世していきます。

まあ、結局人柄としての優しさってのは、仕事上でいうとポジティブな面と、ネガティブな面があって、こと出世だけに限定して考えると、優しさのネガティブな面がポジティブな面を上回るケースが多いのだと思います。

なぜなら、優しさがあるばかりに、部下をゲキ詰めして、馬車馬のように働かせて成果をあげることができないからです。そして、上からしてみれば、ゲキ詰めしていようが何であろうが、とにかく、レスポンシブに期待通りの仕事ができる人間を重用します。結局のところ、上も、そのまた上から、理由はなんであれ(部下が精神的に参ってるから、ですとか、まだ慣れてないから、ですとか、まだ若いから、ですとか)、頼んだ仕事が期待通りのクオリティで期限より前にできあがっていないと詰められるのです。

ということは、優しさはとりあえず、横に置いておいて、まずはきちんと仕事を目の前にもってこられる人間を配下におきたい、つまり出世させたいわけですね。

かくして、優しさというよりは、厳しさによって人を(時に圧政を強いて)管理する人間が出世します。

結局は、声のでかい奴が有利ってことですね。

そして、二つ目は、一見厳しいんだけど、根底には愛を感じられる人格者です。このタイプは、どちらかというと、最終的な出来上がりの質はきっちりチェックするものの、部下を信頼してプロセスは一定程度任せて、モチベートするスタイルを持ちます。圧政とは対照的ですね。

しかし、実は、このマネジメントスタイルはとても難しいのです。そもそも、自分の方が仕事ができるのに、部下を信頼して任せないといけないのです。結果として、最初は質の低い資料が出来上がる可能性も高いですが、そこはきちんと愛を持って長い目で指導し諦めず、あくまで自発的に良いものを作るというマインドセットを植え付けて、部下が自働的に高い品質の成果物にこだわるように仕向けなければいけません。このタイプの人柄は、もちろんのこと部下から慕われ、尊敬されますが、部下が甘えてしまったりするとアウトですし、違うスタイルの上の人がいた場合は、「甘いんちゃうか?」と疑惑の目で見られることになるので、注意が必要です。

ですが、このスタイルでうまくいった場合も、下からの評判がよく、それが部下や他部門の人間を通じて上に伝わるので、出世します。

かくして、2種類のタイプがいるのですが、圧倒的に多いのは残念ながら最初のタイプです。

まあ結局は、その方が本人にとっても出世するためと割り切れば、楽なんですよね。

特に何も考えなくてもよくて、恐怖心さえ抱かせれば勝ち、あとは自分が納得する水準になるまで、曖昧なダメ出しをして働かせれば良いだけです。教育とか、配慮、人を自発的に動かすためにモチベートする、といった複雑なファクターを気にする必要がありません。

ただ、イメージ的には、10人に2-3人は、人柄よし、のタイプがいるので、厭世的となる必要はないと思います。

前者に当たった場合は、嫌な奴が上司になった時の対応法をガイドラインに頑張りましょう、、大変なんですが、慣れればどうってことないです。

上の人の覚えが良いかどうか;25%

これは、人柄とも関係するのかもしれませんが、上(役員以上)から目をかけられているかどうかも重要です。

結局のところ、上がどういうタイプを好むかに相当程度左右されるものの、本当に鋭い人は、上がどのようなタイプが好きか一瞬で見極め、カメレオンのようにその人の前ではタイプの人間に化けることができるため、上の覚え、を先天性に依らず、後天的な努力によって獲得することは十分に可能です。

仕事の能力と一定程度関係するんですけど、それだけではなくて、所謂、「かわいげ」や「愛嬌」があると、目をかけられやすいですよね。あとは、仕事に対してつたないけれども熱心であること、ですとか。

最も気に入られるのが、「上の若い頃に似ている」ことだと思います。

その時にいなかったんだから、知るわけないでしょう、と思うのですが、まあその辺りは飲み会や普段の会話の端々から巧妙に推測する技を使えば、相当程度正確に把握して、擬態(笑)することができるでしょう。

いずれにせよ、何か困ったことがあると、上の頭の中に、ポッとでてくる、そんな存在になれるかどうか、が出世に影響を与えるということです。

まあ、そのような存在になるために、日夜サラリーパーソンは、二次会に参加したり、飲み会の幹事をしたり、会議の席次を考えたり、くだらない下仕事をしているわけですね。

運;20%

最後は、運です。運は、運なのだから、これ以上語る必要はないでしょう、というと、そんなことはなくて、実は色々と語ることがあります。

まず、何に対する「運」が自分の出世を左右するのか、3つの「運」が重要です。

一つ目の運は、上司あるいは目をかけてもらっていた役員に関する運です。

例えば、自分がいくらうまくやって成果を上げていても、上司が不祥事で捕まれば、すべての苦労は水の泡で、出世するにあたっては遅れをとることになるでしょう。自分がどう動くかはコントロールできますが、他人がどうミスするかはコントロール不能です。

したがって、出世したい人間は、この種のuncontrollableな運に、出世の如何を相当程度左右されます。

二つ目の運は、会社自身の運です。たまたま政府の政策、技術革新の恩恵、成長テーマとの関連性、等、時の運を理由に、会社の利益が急激に増えたり、減ったりします。

その結果、何が起こるかというと、二つのことが起こりえます。

一つは、業績が急激に悪化した場合、その会社自身がなくなるリスクがあるということです。そのような状況になり、他の会社と合併・吸収されるようになると、そもそも出世どころか、そこで働くことすらままならなくなる状況に追い込まれます。

次に、業績が急激に改善した場合であっても、それによって自分が所属する部門が花形部門から外れ、出世する人材を輩出する部門とは認識されなくなるリスクがあります。

例えば、デパートメント業界で、今までは国内の富裕層を相手に着物や呉服で儲けていた老舗の百貨店が、海外からのインバウンド顧客が飛躍的に増えて、インバウンド向けのブランド品の売上が過半を超えるようになり、フロアの半分を高級服飾ブランド・宝飾品で埋めることにする、という新たな方針を打ち出したとします。そうすると、これまでの花形だった外商部門から出世する人間が減る一方、中国語に堪能で、中国のツアー会社とネットワークのある海外インバウンド部門の人が出世するようになるでしょう。

その会社が身を置くビジネス環境は刻々と変化しており、一見会社の中にいると、何も変わっていないように見えますが、実際には、こうした不確実性(良い意味でも悪い意味でも)にさらされています。

この種の運は、他の業界の人と交流をもって、トレンドを把握するですとか、海外新聞をネットで読んで情報を仕入れるとか、やりようによっては少しはマイナス方向に振れることを軽減できます。

その意味では、異業種交流会とは、実は他の業界の話を詳しく聞くことにより、自分の業界との関連や繋がりを見つけ、自らの会社が置かれている外部環境がどのように変化しており、今後どのような状況に置かれるのか、より客観的で正確な情報を把握するのにも、有用なのかもしれません。

三つ目の運は、あなた自身の運です。コントロールできそうに見えて、最もコントロールできないのは、自分自身の運ではないでしょうか。

なぜなら、まあ誰だって自分の運が悪い方向に傾くよう生きていないからです。にもかかわらず、残酷にも、人には時として不運が降りかかります。

それは大病だったり、恋人の不機嫌だったり、親の不幸だったりさまざまです。

時に、その運は、出世そのものをフイにします。

例えば、たまたま同期と飲みに行った際に言った上司の悪口が、たまたまその居酒屋の後ろの席に居合わせた上司に聞かれてしまった、とか、信頼していた同期が実は口の軽い人間で会社の悪口を言っていることを言いふらされてしまった、とか、大事なプレゼンの前に、重い病気にかかり、プレゼンを休んでしまった、とか、もうバラエティは無限大です。

こうした運の力に意識的な人間は、普段の努力によりこの運により生じるダウンサイドリスクを最小化しますが、それでも起こってしまった場合はどうしようもないです。まさに運を天に任せることしかない。

以上、三つの運について述べました。所詮は運ですが、こうした要素に20%も出世が左右されるということですね。

理不尽極まりないのですが、それもまた人生なのです、と達観することが、まずは重要なのでしょう。その上で、諦めずに何ができるか考えてみる。

そして、出世なんてものは、所詮はこうした運の要素に左右される性質のものだから、あまり執着というか、入れ込まないでできることをやる、程度の心持ちのほうが精神衛生上も良いですし、それこそ運がこっちに向いてくることが多いような気がします。

まだまだ短い職業人生ですが、出世しよう、出世しようと躍起になっている時より、単純に自分が楽しいと思う仕事、あるいは仕事に楽しさを見出して、目の前のことを一生懸命サボらずに質を下げずに淡々とやりきる、むしろこうした態度が運気を呼び寄せるんじゃないかと考える今日この頃です。

これらを把握した上で、どうすべきか。

さて、出世を分解して、何がどのように出世に影響するか改めて確認しました。

ほとんどが、誰もが意識していることだと思いますが、どちらかといえば、意識せずにこうしたファクターを普段の振る舞いに取り込めるか、というのが差をつけるためには必要不可欠なのだと思います。

こんなこと考えていたら、正に仕事が、引いては人生がつまらなくなっていますよ、なのですが、僕のオススメとしては、一つのゲームとして期間を決めて、こうした出世に必要なありとあらゆる行為を試してみる、ことですね。

そうすることで、出世することが、どれだけ大変なことかがわかるし、結果として自分にその道が合わないということもわかるし、うまくいって出世したら、その先の世界も見えて(そしてそれが別にいうほど魅力的なものでもないことが分かったりして)一つ大人になることができるかもしれません。

その場合は、3年とか5年とかそれくらいのスパンでお試しするだけですので、それほどキャリアも痛まない一方、組織の内部にどのような力学が蠢いているか知ることができ、とてもお得なオプションです。

単に出世争いに汲々とする、というと、なんだか面白くもなんともなさそうですけど、こうした要素に分解することで、見えてくることがたくさんありますし、攻略の余地があるような気になりますよね。

ただし、お試しした結果、出世の魔力に魅入られ、出世だけが人生の目的となり、人を蹴落とすことも厭わない人間になる、というようにミイラ取りがミイラになる状況は避けるよう注意したいものです。出世のための努力が奏功すると、結構達成感もありますし、元々はやりたい仕事をするために出世したのに、いつの間にか出世するために仕事している、というような状態になってしまうものです。

そうならないためにも、日頃から冷徹に出世に必要なファクター、方法論を自分なりに考え、整理しておくことをお勧めします。

一つの会社には、その会社独自の出世にかかる作法が存在するはずです。今回ご紹介した考え方は、所詮は概括的なガイドラインであり、そのまま使うというよりは、これを題材にして、どうカスタマイズするか、どう現場にフィットさせていくか、という点が肝となりましょう。