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所謂ホワイトカラーのAI・Roboによる置き換えについて(伝統的日本企業の現場から) 第3回

所謂知的生産業と言われる分野へのAI・ロボの適用余地

さて、ボリューム層を相手にするためには比較的標準的定型的な処理が求められる分野においては、AI・ロボの適用余地(つまり人の手を介さず自動化される割合)は、自動化に必要なロボの生産コストが低まるにつれ、これからも進んでいく、ということを書きました。

さて、ここまで書いたのを読み返して得られる示唆が何かと言うと、当たり前なのですが「これから仕事を選ぶ場合も、ロボに代替されるような標準的定型的な仕事を選ばない方が良い」ということです、また、独立してサービスを提供するときも同様で「ロボに代替されるような定型的標準的なサービスを提供するな」ということです。

これは例えば、飲食業だと、シェフの人となりが出るようなエッジの効いたメニューなり雰囲気を提供しろ、ということですし、リテールだと品揃えに個性を出せ、ということですし、宿泊業だと、寝て起きる以外の何かを提供しろ、ということになります。

しかし、実のところ、上記のところを意識せずしてそもそも一個人が起業、ということを考えるには至らないので、それほど心配する必要はないでしょう。自分が絶対に良いと思っているけど、世の中には知れ渡っていない何か、を伝えることが起業家の存在意義でもあるんでしょうから(時に二番煎じでもそれなりに儲かるケースは存在するが、その場合でも細部を見てみると後発なりの工夫を凝らしているものです)、起業を考える時点で、大企業の標準化定型化されたサービスを提供するという選択肢は存在しないはずです。

さて、では知的生産産業へのロボ・AIの台頭とはどのように進むのでしょうか。

ここで、ざっくり知的生産産業といっても、沢山あるでしょうし、僕自身が提供できる情報も多くはないので、ここは僕が属する伝統的日本企業の総合職に的を絞ってお話しします。

伝統的日本企業の総合職である限り、ある種業態が違っても、仕事の仕組みや成り立ちは相当程度類推が効くからです。

具体的に伝統的日本企業の総合職が従事する職種は何か、というと、

  • 人事
  • 総務・広報
  • 経営企画
  • 企画(マーケティング含む)
  • リサーチ
  • 営業
  • 事務部門
  • 支店全般

とまぁ、誤解を恐れずに分類すると、こんな感じです。

もちろん、その他にも沢山職種はありますが、総合職採用の人材の8割から9割は上記のどこかに属しますし、残りの1−2割のレアケースにすぎないため、今回はわかりやすさのために捨象します。

8割以上の総合職は、上記部門を3年ですとか5年毎くらいに、転々とします。

いやいや、そんなことはないでしょう?今は専門性の時代、pay for jobでしょう、3年で異動で一体何が学べるっていうんですか、グローバル化が叫ばれ、各国の当該分野のプロが集う他国の企業と競争する中で、3年で異動してなんの関連性もない部門で働くということですか?それはさすがに嘘でしょう?、こういう反応が当然かと思いますが、真実です。

3年というのは言い過ぎですが、5年単位では部門変わってる人が殆どで、5年前と比べて同じ分野の仕事をしている人は極めて稀です。なぜそんなシステムを未だに維持しているのかというと、これは以前も論じました。新卒一括採用ですとか、儲かる仕組みはもうあるのだから、あとは回せばいい、という高度経済成長なりバブル時代に作られた仕組みが未だに現存するだとか、そういうことです。ここには今回は大きく深入りせず先に進みます。

では、上記に分類できるとして、次に行うべきは、近い将来に自動化されるプロセス・当面(10年以内)は自動化されず人間の手を介して行われるプロセスの割合にあたりをつけることです。

前者の割合が高ければ高いほど、マシンに代替される可能性も高まりますし、後者の割合が高いほど、当面は温存される可能性が高いです。

この種の「あたりをつける作業」は、精緻にやればやるほど、スコープや分析手法に囚われ先に進めなくなります、ですので、ここは10年以上伝統的日本企業で働き、その他の業界の伝統的日本企業の内情もある程度人から聞いて生の営業トークではない声を知っている僕が勝手に決めます。

まあもともと明日のこともわからない中で、10年以内に自動化されるプロセス・されないプロセスの割合を当てる作業なんて、仮定に仮定を重ねる作業にすぎず、真面目にやればやっただけ効果が上がるという代物ではないです。それよりはあたりをつけて、目標の7割なり8割程度の精度を最小のコストで達成し、その結果から得られる示唆をどのように自分の行動に還元するか、という部分が肝になると考えます。

職種毎の自動化されうるプロセスと当面マニュアルであり続けるプロセスの割合

最初は一つの業種で1行くらいで書こうと思ったのですが、それだとあまりに乱暴ですので、小分けにして書きます。

人事部

伝統的日本企業においては、人事部は出世コースの代名詞と言っても過言ではありません。定義は、ウェブを探したのですが、あまり良い定義がなかったので、僕なりの理解を書きます。

人事部とは、①既存社員の人員采配にかかる調整、②新規中途採用計画策定・実行・各部門への振分け、③昇給・報酬・昇進の仕組み作り、の3点を主な仕事としています。

もちろん、他にも人事部が取扱う範囲は広いのですが、昨今はコンプラ部門との垣根も曖昧で、会社によって取扱う分野が違うため、そこは上記からは省いています。

もう少しだけ掘り下げますと、①は、伝統的日本企業ならではなのかもしれないですが、人事部が特に管理職以下の社員の人事権を握っています。とはいっても、各ビジネスラインの偉い人の意見も聞かないといけないため、異動させる人材と各部門が欲しい人材のマッチングを行うミドルマン的な役割が求められます。なぜこれが出世コースなのかというのは、実はこの仕事の進め方を考えてみると自明です。例えば、人事部は上記のように各部門の欲しい人材を各ビジネスラインの偉い人、ひいては役員レベルのご意向を伺い調整する、仕事ぶりを見られる機会が多くなります。

一方、各ビジネス部門で働いている人はどうでしょう。僕もそうですが、自分の担当ラインの役員以外と顔合わせる機会ってそれほどないし、ましてや仕事ぶりを見られる機会は相当限られてます。で、上の方々からすると、他のビジネス部門の馬の骨ともわからん人よりは、自分が実際に働いている現場を見て優秀だと思った、という人のほうが登用する時に安心できるでしょう。

しかも、それなりに偉くなればなるほど、自分の見る目に自信を持っているし、他人の見る目よりは自分の見る目を信じる(それが故に、彼・彼女はここまで偉くなったわけでしょうし)でしょうから、尚更自分が優秀だと判断した人間を登用する傾向にある、と。ただ、単に人事部が出世コースというだけで出世しているわけではなくて、出世するに有利な機会が転がっている環境、ということです。

それはもろ刃の剣で、そこで失敗したら上層部にまで知れ渡る手痛い失敗になりますし、必ずしも人事部=出世コース=残りの人生安泰、の等式は成り立つわけではないです。それなりのプレッシャーと成果を上げることが期待されていると、そういうことですね。

②は、まあ①と似ていますが、会社のビジョン、ビジョンを実現するための戦略、を実現するには、どのような部門にどのような人材が必要か、を人的資源という見地からすでに存在する人々に大きな不満のでないように慎重に決めていく作業で、経営目線と現場目線両方求められる仕事かと思います。仕事をする過程で、会社のビジョンに精通し、ビジョンを実現するための戦略を経営陣と対話することも多いです。ゆえに、これも経営的視座から会社を観察し、現経営陣から薫陶を受ける機会が豊富、という点で、出世コースたる所以です。

③も、どういう人間が評価されるか、という仕組みを作るわけですから、そりゃ組織の上層部と話す機会が多くなるでしょう。

余談ですが、評価システムは本来的にはシンプルであればあるほど望ましいのですが、伝統的日本企業の場合は、日本的年功序列制度と成果報酬制度の並列となっているため複雑怪奇となっている例が多いです。

これら3点が人事部の主な仕事です。

ここまで書くと、なんだか、自動化できる部分なんかあるんか、という気もしてますよね。でも、ゼロではないです。

例えば、採用活動プロセスは最後の面接を除いてほぼ自動化することが可能でしょう。具体的には、会社で働いている人間で評価されている人材の特徴・特性を洗い出して、それぞれの特徴・特性をスコアリングして、システムに入力しさえすれば、あとはAIが適当にスコアの高い人間を見繕ってくれて、選別された五人だけ人の目で確かめれば良いとか。レジュメもAIに分析させて、コピペがないかとか、バックグラウンドチェックとか、SNSの投稿に不適切な写真がないか、とかテキストマイニングしてIQ・EQを把握したりとか、その辺りはいくらでも自動化の余地があります。

しかし、他にも色々考えましたが、それ以外は意外にも人からマシンに代替される感じはありませんね。というのも、偉い人が集まる人事部が自ら自分たちの仕事を自動化します、と宣言するイメージが僕には想像つかないのですよね。中枢が自殺にも等しい宣言を自らするかな、と。

それだったらもっと自動化にふさわしい部門があるから、そこからやっていこうぜ、と、本丸は最後まで取って置こうぜ、とそうなるのが通常のプロセスなんじゃないかと。

故に、ここまで気づいて思ったのは、自動化可能かどうかを論じてもあまり意味はなくて、自動化可能な仕事が、組織力学を踏まえた上で、実際にどの程度今後10年で自動化に踏み切られるのか、といったことがより重要ですね。

ここまで書いてこれまでのを全て書き直すのはしんどいので、直しません(^^;)。

で、人事部ですけど、自動化可能なプロセスはそれなりにあるが、せいぜい1割程度じゃないですかね、実際に自動化されるのって。試行的にレジュメ選定プロセスにAI導入しました、とか、面談をレコーディングして嘘を発見する音声認識アルゴリズムか何かを導入しました、とか、それくらいでじゃないかなと。あるいは、リアルタイムに画像・音声を記録・発汗状態や表情、声のトーンを解析して手元の端末で、就職希望者が現在嘘をついている確率を常時表示させるソフトウェアを導入するとか。

例えば、新卒入社面接の典型的質問である「今最も入りたい会社はどこですか、弊社は第何志望ですか?」という踏み絵質問に対して、学生が「もちろん、御社が第一志望です。内定をいただいた場合は、他を全て辞退するつもりでおります。」とか言っているときは、嘘ついている確率90%以上でアラームがなり、逆に、面接官が「そうはいっても、あなたほど優秀な人材であれば、他の会社から内定をもらうことなど簡単でしょう。実のところ、競合のA社に内定をもらっていると思っているんですけど、どうですか?」と聞くと、学生が「そんなことはございません、内定どころか選考を受けてもおりません、御社が一番です」で、またアラームがなるという笑。その程度の活用くらいしか見出せませんね。

いずれにせよ、出世コースと言われる人事部が自らの仕事を自動化させてもせいぜい1割しめるくらいじゃないかなと思います。9割の仕事は温存されるでしょう。

ただ、安心しちゃいけないのが、時代のトレンドとして、伝統的日本企業といえども人事部が人を差配するというよりは、現場が欲しい人材を自分たちで考え決める、という方向に傾いているのは強く感じるので、人事部の仕事そのものが少なくなるんじゃないかということ。これは他の会社の人から聞いても同じです。未だにゴリゴリの人事部中央集権な会社はそれほど多くはない。当たり前ですが、現場の方が必要な人材を正確に把握してますからね。中央に任せるほど伝統的日本企業についていえば、余裕がなくなってきているとも言えるのかもしれません。

ですので、9割の仕事は温存されるとはいえども、そもそもその部門に配属される、あるいは、そこでサバイブできる人間は減っていくから、別にバラ色の未来ではない、と僕はそう考えます。熾烈な競争が待ち受けているに違いないわけですね、マシンとは戦わないが、人間とガチで戦う機会が増えるという。

長くなったので、残りの部門は次に。