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議事録の書き方

annazuc / Pixabay

社会人にとっての議事録とは?

伝統的日本企業では、記録、議事録、議事メモ、とかいって、事あるごとに報告書のようなものを書かされます。

これは、僕にとっては社会人になってから最も違和感を覚えた、且つ慣れずに苦労した「業務」の一つです。

それまでは、いわゆる仕事って、プロジェクト運営とか、プログラミングとか、調査・分析したりとか、割と手触り感があるものが大宗をしめるのだと思っていました。

しかし、実際にはそうじゃない。それこそ、新人の時なんてコピー取りと議事録書きで、ほとんど時間が費やされ、夕方5時以降から、上記の「手触り感のある仕事」をしていたような記憶があります。

なんでそんなに議事録に時間取られるのか、というとですね、これがめちゃくちゃ奥が深いんですよ。

「議事録なんて、会議とかミーティングで話した内容をそのまままとめるだけでしょ、超簡単じゃん」と過去の僕は思ってましたが、全然そうじゃない。

まず、「内容をそのまままとめたら」、会議に出席した上席から叱責されます。

僕自身も、何度も怒られたことがあります。そして、僕はそれはおかしいと当時思ったので、隙を見て先輩に問いただしたのです。

「組織の管理職なんだから、自分の発言に責任を持つべき、という原則に鑑みれば、ミーティングで話した内容をそのまままとめれば、それがすなわち議事録になるはずだ。しかし、実際にはそのまま書くと怒られる。一体どうすればいいんだ、おかしいじゃないか。」と。

その時、先輩から言われた言葉は、以下の通りでした。(ちなみに、その先輩は、人格者で、僕の不躾な質問にも毎回誠意をもって答えてくれました、先輩ありがとう。)

「確かに、お前のいうことは一理ある。全員が論理的で無駄なく理路整然と話し、明々白々なことだけをトピックとして論じているだけなら、正に議事録とは「会議で話されたことをそのまままとめるだけ」でいいのかもしれない。

しかし、実際には、何年にもわたって白とも黒ともつかないグレーなトピックを題材に、議論している本人さえも明確な答えがわからないことを何名かでウンウン唸りながら、どうやったら次のアクションに結びつくのか議論していることが多いものだ。

そのような会議においては、会議中に明確な答えがでない、次のアクションが定まらず、お互いが言いたいことを言い合ったまま、放談会として、終わってしまうことも少なくない。

では、かかる状況に直面した時、議事録作成者としてはどうすべきか。

そりゃ、その打ち合わせが無駄に終わった、ということを正直に書く意味はなかろう。

できれば次のアクションに結びついて欲しいし、その打ち合わせによって、少しは問題解決に向けて前進した様を見せたい。

つまり、議事録とは、

”言ったことをそのまま書いてもいけないし、言ってないことを書いてもいけないのだ。”

打ち合わせ参加者の真意を汲み取り嘘のない形で解釈し表現する。そして、それは組織にとって意味のある内容でなければいけない

それこそが議事録作成者の役割だ、打ち合わせのやりとりをそのまま脚色なく書くだけなら、中学生でもできるだろう。

そんなことはお前には期待していないんだよ。

最初は何を書いたら良いか、わからないかもしれない、でも次第にわかるようになる。」

まあもちろん、単なる事実確認のうちあわせとか、話している内容をありのまま表現する議事録もあるにはあるでしょうけど、そうじゃないものもあるんだよ、ということを伝えたかったのでしょう。

ここまでくるとですね、「議事録」という名前自体がそもそも適当じゃないと僕は思います。

「議事録」改め、「上席の真意を汲み取りアクションに繋げる企画書」くらいのレベルアップが必要なんじゃないかな、と。

伝統的日本企業では、議事録というのは、それくらい力を入れて作るし、議事録の内容が評価されて、実力が認められることすらある。

もはや、議事録の美学、と言っても誤りはないです、趣味というか職人の域ですね。

もしかしたら、そんなに突き詰めて議事録なんてものを考える必要なんてないのかもしれません。

しかし、ここまでこだわった様を見せつけられると、受けるこちらも生半可なきもちではないけない、きっちり分析させてもらいましょう、ということで、今回は僕が苦痛にのたうち回りながら身につけた(会社を出た瞬間に無価値となるであろう)議事録スキルを紹介します。

議事録の作成が必要な打ち合わせに出る前に準備しておくべきこと

打合せの参加者の顔・名前・タイトル・席次(どこに座っているか)

ものすごく基本的なことなのですが、打合せとかいいつつ、実際に打合せが始まってから、打合せ参加者の顔や名前を初めて知るようでは、まともな議事録は書けません。

というのも、相手側が一人か二人ならまあ大きな支障はないでしょうが、打合せ参加者が10人以上いた場合はどうでしょうか?

あれ、この人、なんて名前だったっけ、と考えているうちに議論は先に進み、何を話していたか聞き逃してしまいます。

同様に、その人のタイトルや席次も打合せ前にリサーチして調べておくべきでしょう。

誰がどこに座り、どのタイトルの人間が何をいうか、という点を即座に把握できるからこそ、その後の的を得た、次のアクションにつながる議事録が書けるのです。

タイトルを事前に把握すべき、というのは、打合せというのは、より正しい合理的な意見が尊重され、誰が言ったかは関係ない”わけではなく”、上の人が何を言ったか、が最大限に優先されるものなのです。(もちろん、例外はありますが)

ですので、事前に参加者のタイトルを把握せずして、その後の組織の方向性に合致した良い議事録は書けません。

以上の理由から、僕は事前準備の一つとして、打合せ前には、打合せの参加者の顔・名前・タイトル・席次を把握してから、打合せに挑み、発言者のタイトルに応じて、議事録上での取り扱いを重み付けしています。

打合せで何度も出るであろう用語の略語を決めておく

これは非常にテクニカルな話なのですが、僕は重要だと思っています。

というのも、僕たちは速記者じゃないので、一言一句打合せの記録を書き写すことはできないわけです。

そうはいっても、誰かが重要なことを言った後に、間髪いれず他の誰かがさらに重要なことを被せる、といったようなことが頻繁に起こります。

そうすると、メモを取る人間はどうなるかというと、書くのが間にあわせず、記憶に頼るしか無くなるのです。

特に僕は悪筆で字が書くのが人より遅いので、この議論の進みが早い展開には非常に苦しみました。

いやいや、まだ手が追いついてないよ、と何度思ったことか。。。

そこで、考え出したのが事前に打合せで使われるであろう用語は全て事前に決めておくことです。

そうすることで、メモをとるスピードが圧倒的に早くなります。後から読み返しても理解しやすい。

例えば、クレジットならばC、金利上昇ならばint↑とか、事前に決めておけばいいのです。

特に字が書くのが遅い人は、この方法で相当程度メモの質が改善するので、ぜひ試してみてください。

打ち合わせ中に留意すべきこと

議事録を取る上で打合せ中に留意しなければいけないことを一つだけ書きます。

質問、回答の一連の流れは、確実に押さえるようにしましょう。

というのも、質問、回答のやり取りは、打合せの肝となることが多いのです。

例えば、偉い人が「Aすることはできないのか?」という質問をした場合、部下が「Aは難しいが、Bはできますので、これを2週間以内に実行できるようにします」と回答した場合、これがそのまま「会議で決定した事項」として扱われます。

つまり、会議後のnext actionに直結する。これを逃すとですね、一体お前は何を聞いてたんだ?、という風になります。

逆にこのやり取りさえ集中して押さえていれば、他の瑣末な事項は多少取りこぼしがあっても見逃してもらえます。

ですので、どんなに要領をえないウダウダした打合せであっても、せわしない打合せであっても、質問、回答の内容だけはきちんと把握するようにしましょう。

議事録書き方テンプレート

ここまできたら、あとは議事録の構成のベストプラクティスに沿ってメモを見ながら埋めていくだけです。

日時、場所、参加者(先方、当方、肩書きとともに)を明記する

基礎情報ですね。肩書きを書いているのは、何を言っているのか、より、誰が言っているのか、が重要だからです。

組織というのは、ヒエラルキーのもとに成り立っているので、上の人間が何を言っているかこそ気を払うべきであり、全員の発言を重み付けせずに捉えることは組織の人間としては正しい姿勢ではありません。

そして、肩書きはその重み付けの重要なファクターなのだからきちんと最初に明記しておきましょう。

要旨(サマリー;背景、目的(ゴール)、結果、next action)を書く

ある意味、この要旨で議事録の出来が決まる、といっても過言ではありません。

特に偉い人なんかは、議事録の中の詳細なやり取りを一つずつみる時間がないわけです。

必然、要旨がないと、そんな記録は読むに値しないもの、と思われますし、要旨の出来が悪いと、打合せの要旨もわかりやすくまとめられない「仕事のできないやつ」という烙印を押されます。

飲み会の作法でもお話ししましたが、議事録って飲み会の幹事としての仕切りと同じで、単なる打合せの内容を記録するだけの事務的な仕事、ではなくて、仕事の実力を見極める、精査する良い材料だと思われているのです。

ゆえに、この要旨は、背景、ゴール、打合せの結果一体何をするのか、を箇条書きで書くようにしましょう。

一つが多くても2文程度です。

背景は、これまでの経緯です。

ゴールは、背景と一緒に書くことも多いのですが、その打合せは一体に何を目的に設定されているのか、です。背景とまとめて書くのもオーケーです。

まとめて書く場合の例は以下の通りです。

「・プロジェクトAは期初3億の予算が承認され現在パートナー選定をしているところ、有力パートナー候補B社より選定間際に、予算を大幅に超過した見積りを提示され現在交渉中。

・今般、B社専務より我が社部長に、交渉の期限、予算見積りにかかる認識合わせをしたい、との申し出があったことから、当打合せを設定したもの。」

みたいな感じで、いきなり打合せの内容に入るんじゃなくて、全体としてどういうストーリーがあって、この打合せがその大きなストーリーのうち何にあたるのか、がわかるように書くようにしましょう。

最後の、打合せの結果何をするのか、も必ず書くようにします。

というのも、次のアクションにつながらないのであれば、本質的には打合せ自体無意味だったということに他なりません。

たとえ、ただ偉い人同士が顔を引き合わせただけ、ということであっても、なんとか一つくらい次のアクションをひねり出してください。

次のアクションが書いていない議事録は、偉い人が読んでも、へー、だけで、興味を持つことはありません。価値を感じることもありません。

また、ビジネスとしても単なる時間の無駄であり、次のなんらかのアクションに繋がるからこそ、複数人が貴重な時間を使って打合せに参加をして、議事録まで書いている、ということで、次のアクションだけは忘れないようにしましょう。

議事録、とかいいながら、将来のこと書いているじゃないか、と言われるとその通りなのですが、これが伝統的日本企業のルールなのです。

詳細なやり取りを書く

偉い人はサマリーしかみないので、詳細なやり取りは適当でいい、わけではなく、詳細なやり取りもしっかりと書きましょう。

ただし、ここは主要な質疑だけ抽出すればよいかと思います。

打合せの趣旨とかけ離れたどうでもいいやり取りは捨象して結構です。

ここで手を抜くと、サマリの出来栄えの良さをみて高まった期待が地に落ちますので、手を抜かないようにしましょう。

ここで手を抜くなら、サマリから手を抜くのと同じです。

補足:議事録を書くタイミング

これは補足ですが、議事録を書くタイミングはできれば当日、遅くとも次の日の夕方までにはドラフトを作成できていた方が良いでしょう。

というのも、参加者の記憶も薄れるし、その打合せの結果を待っている上席がいた場合、例えば3営業日くらいあけて議事録を書いていると仕事が遅い、と評価されることなります。

こうしたちょっとした印象によって、こいつは仕事できる、できない、と判断されてしまいがちなので、折角だからこんなつまらないことでつまづかないようにしましょう、と、そういうことです。

では、精度を下げてもいいのか、というと、精度を下げてでもfirst reviewは1営業日後には受けたいところです。つまり速度優先です。

最後に;伝統的日本企業の議事録の未来

最後に、こうした打合せや会議の結果を記録に残す、という議事録書き、という仕事が今後どうなるのか私見を書きます。

結論から申し上げると、その重要性は低くなるでしょう。

今後は、AI等の技術により録音した声を解析して文章にして、議事録風に仕立て上げる、なんてことができるようになるのかもしれません。

僕がいくつかのプロダクトをお試して使ってみましたが、どうも、機械は複数人の声が同時に話すシチュエーション、脈絡のない話し方をする人の発言は上手く解析できないようです。

また、全員が専用のマイクを使って十分な音量で機会が聞き分け可能なレベルで会話をする、のであれば、一定程度は聞き取れるのですが、これが普通の会議室で、端っこの方にレコーダーを置いてひっそり録音して、とかなると、もう誰が何を話したかというのはさっぱり聞き取れていない、支離滅裂な文章になっているのですよね。

特に日本語だと主語がなくていきなり目的語から始まったりするので、必ず(というわけではないが多くの場合)主語から始まり動詞で終わる英語と比べると、より日本語の方が機会が解読しづらい、というのはあるでしょう。

また、上で述べたように、単に話している内容を書き写しているだけではなく、重要性によって重み付けして、次のアクションまで書いているわけですから、この種のファジーな部分は結局のところ人間の判断に任せる他ありません。

ですので、これから少なくとも5年、長くて10年は議事録書き、という仕事が伝統的日本企業からなくなることはないでしょう。

ただ、AIなり機械が、会議中の発言を全て文字に落としてくれるレベルになると、これはかなり人間の作業が楽になるでしょうね。

なんたって、その会議の要点さえ掴んでいれば、ある意味自分でメモを取る必要もないし、そのメモを読み返す必要もない。

機械が起こした文字を再編集して、上記のような綺麗な形に落とし込むだけです。

それでも、なお、この綺麗な形に落とし込む部分は、職業人としてのセンスが要求されますので、仕事ができる人の能率は一層上がるようになるが、できない人は結局使えこなせず恩恵を受けることができない、というのが現実なのではないでしょうか。

何が言いたいかというと、どんなにテクノロジーが発達して議事録の仕事が楽になったとしても、全員が同じ質の議事録をかけるのかというとそうではなく、結局はその人の情報処理能力、優先順位づけ能力、全体を捉える能力、先見性、に左右されるんじゃないかな、と。僕は思います。

ですので、議事録書きを命令されたとしても、意味のないこと、死にゆく業務をやるのか、、と、即座に絶望するよりは、議事録書きの仕事をする中で、職業人としてこれからの世界でなくならない普遍的なスキルをどのように高められるか、ということを考えた方が有益じゃないですかね。

何事も捉えようなのかもしれませんね。